傷跡

2021年頃(年月不明)

探索中魔物に不意討ちされパーティが散り散りになり、合流できず仲間から樹海で死んだと思われているショタメ、
実は生きていて数年後娼館で見つかってほしい。

樹海で一人でいるところを人さらいに狙われ、
娼館に売り飛ばされ、かつての仲間が探索をしてる間も、ずっと客をとらされ続けていたショタメ。
ある程度稼いだらここから出してやるという支配人の言葉を信じて、必死に客に奉仕をする。

客から「あそこのギルドは第二大地まで踏破した」、「帝国って国が見つかった」等、
そんな話を聞くたびに焦り、だけど冒険者としての自分を忘れないように、精神だけは屈さずにいようとする。

ある日、羽振りの良い客がどっと来て、最奥である第五迷宮が踏破されたことを聞いてしまったショタメは希望を失くす。
与えられた仕事に対してもひどく無気力になり、支配人に仕置きされ、
痛みから逃れたい一心で働くが、精神が少しずつ削られていった。

世界樹は他のギルドに踏破されてしまい、頻繁に探索することもなくなり、茶フォトは暇をもて余していた。
客足が前よりも少なくなったこともあり、裏通りの店一帯が閉店することを知り、
街を出る前、記念に娼館に向かった茶フォトは、かつて同じギルドだったショタメと客として再会してしまう。

何故生きているのか、どうしてこんなところで働いているのか、茶フォトは言葉に詰まる。
茶フォトはショタメの事情が知りたくて呼び止めたが、
そのままなし崩し的に「指名」したことになり、部屋に来るショタメ。

ショタメは狼狽える茶フォトと話そうとせず、強引に行為に及ぶ。
茶フォトにとって、ショタメは清廉な印象があり、密かな憧れを抱いていたのに、
今、目の前で奉仕する姿は、当時の印象からあまりにもかけ離れていた。

行為を終えて、気まずい沈黙が流れる中、不意にショタメが声をあげる。
「…それ、ちゃんと治療しなきゃ駄目だよ、手、見せて」
茶フォトの手の甲に化膿した傷を見つけたショタメは、
部屋にある救急箱を開き、手際よく手当てをする。
傷に直接薬液を垂らさず、痛まないように、薬を染み込ませたガーゼを傷口にあてる治療の仕方は、
宿の部屋で過ごしていた時と何も変わっていなくて、茶フォトは何だかやりきれない気持ちになった。

なんと言葉をかけていいのかわからないまま、特に会話もせず退館する茶フォト。
後日、どうしても気になって、娼館に行ってみたものの店は跡形も無くなっていて、
ショタメの行方は誰にもわからなくなってしまう。

手元を見るたび、茶フォトは好きだった人の事を思い出す。
もう二人の人生が交わることはないが、ショタメは茶フォトの手の甲に傷跡として残り続けた。